私は、千林という大阪の下町で父が経営する有床診療所、柴眼科医院の副医院長として働いております。
専門は白内障、緑内障、網膜硝子体です。
いわゆる開業医として働くようになってから、私が日々の診療や手術をこなしつつも特に心がけていることは、一般的とされている手術法や、既存の器具にとらわれることなく、何か新しいことをを考え、工夫することです。ただ、口で言うのは簡単で、なかなかこれが難しく、ほとんどのアイデアは不発に終わるという寂しい状態でした。しかし、つい最近、ちょっとしたアクシデントから特許取得に至るということがありましたので、紹介させていただきたいと思います。
われわれ眼科医は手術を行なう際、術野に貯留する水と角膜の乾燥に対し、吸水や水かけ、粘膜性物質、その他の補助具などで対処します。当院では水の貯留に対して吸引具はしようせず、下分式外眼角リトラクターというものを使用しておりました。この器具は、重りの重量によって目尻を押し下げることにより貯留した水を外に流れやすくさせるもので、簡単で使いやすく、私のお気に入りでした。
しかし度重なる酷使により、ある日、重りの部分とシャフトの接合部が破損するというアクシデントに見舞われてしまったのです。その際に、たまたま趣味の一環で所有していたアートクレイシルバーというクラフト用の粘土で破損器具の修復および改造を行ったのが、発明の始まりでした。
改造外眼角リトラクター
完成品
特許取得には非常に面倒な手続きをふまなければなりませんが、その弁理士が面倒なことはすべて行なってくれましたので、私のすることは弁理士に作成していただいた器具の内容説明書と図面を確認することだけでした。種々の手続きのすえ、2011年8月に無事、審査を通過し、晴れて特許保有者の仲間入りを果たすことができたというわけです。
Deep Set Eyeであっても
器具を設置すると瞬時に排液される。
最後に、敏腕弁理士をご紹介いただきました武蔵国弘先生をはじめ、モニターにご協力いただきました桐生純一先生、西村哲哉先生(大阪府守口市・関西医科大学付属滝井病院教授)、林仁先生(大阪府茨木市・近畿大学医学部堺病院教授)、久保満先生(大阪市鶴見区・くぼ眼科クリニック院長)に厚く御礼申し上げます。また今回、このような執筆の機会を私に与えていただきました千寿製薬株式会社の皆様に感謝いたします。